ペットショップの生体販売を調べて分かったこと。繁殖・流通・売れ残りの現実を知り考える。

ペットショップに並ぶ犬や猫は、どこで生まれ、売れ残ったらどうなるのか。
特定非営利活動法人SPA代表理事の齋藤鷹一さんのYouTube動画をきっかけに、これまで考えたこともなかった生体販売の仕組みに疑問を持ちました。
ペットオークションや繁殖現場、売れ残った犬や猫の行方について、環境省の資料などをもとに調べ、知ったこと、考えたことをまとめました。
この動画で初めて 生体販売について考えました。
ペットショップで犬や猫が販売されていることはもちろん知っていました。
でも、その子たちがどこで生まれ、どのような過程を経て店頭に並び、売れなかったらどうなるのか。
以前の自分は、そんなことを考えたことすらありませんでした。
そんな私が初めて「生体販売」について考えるきっかけになったのが、特定非営利活動法人SPA代表理事の齋藤鷹一さんがYouTubeで公開していたショート動画です。
YouTubeチャンネル 齋藤鷹一【犬猫の人】
【真実】ペットショップに並ぶ犬猫たちの過去を公開します。
動画では、犬や猫が競りにかけられるペットオークションや繁殖の現場、ペットショップで売れなかった犬や猫のその後など、それまで私が知らなかったことが語られていました。
その中には、売れなかった犬や猫が、今度は「かわいそうな保護犬・保護猫」という形で再び販売されることがある、という話も出てきます。
この短い動画を見て、「本当にそんなことがあるのか」と、自分でも生体販売について調べるきっかけになりました。
そして調べていくうちに、それまで何気なく見ていたペットショップの見え方も少しずつ変わっていきました。
今回は、あらためてこの動画で語られていたことを一つずつ取り上げ、実際はどうなのかを調べながら、自分なりに考えてみたいと思います。
素朴な疑問 ペットショップに並ぶ動物たちはどこからきているのか
私は動画をみて自身で調べるまで、ペットショップに並んでいる犬や猫が、どこから来ているのかを考えたことがありませんでした。
ペットショップに犬や猫が並ぶまでの流通経路
環境省が公開している資料「犬猫の生体の流通経路」を確認すると、犬や猫を繁殖する「犬猫繁殖業者(ブリーダー)」からペットショップやホームセンターへ直接流通する経路だけではなく、「生体卸業者」や「オークション会場(セリ市)」を経由する流れも示されていました。

出典:環境省「犬猫の生体の流通経路」をもとに結び-LINK作成
この資料で特に目に留まったのが、ペットオークションの存在です。
環境省の資料には、当時の「小売市場の50~60%はオークション経由」と記載されています。
私は動画を見るまで、「ペットオークション」というものが存在すること自体を知りませんでした。
では、犬や猫のペットオークションとは、実際にどのようなものなのでしょうか。
動物を競りにかける「ペットオークション」は本当に存在する?
車や中古品がオークションで売買されていることはよく聞きますが、まさか犬や猫まで競りにかけられ、事業者同士で売買されているとは、自分はまったく知りませんでした。
環境省のWebサイトを確認したところ、ペットオークションは「競りあっせん業」として、第一種動物取扱業の一つに位置づけられていました。
犬や猫の繁殖業者などが出品し、ペットショップなどの販売業者が落札する
公開されている情報を確認すると、犬や猫の繁殖業者などがオークションに出品し、ペットショップなどの販売業者が競りに参加して落札する仕組みになっていました。
その売買を仲介するオークション事業者が、環境省の分類でいう「競りあっせん業者」です。
実際の会場で行われている動物の業者間売買
国内で営業しているペットオークション事業者の公開情報を確認すると、実際の会場で毎週決まった曜日に競りを開催し、会場だけではなくWebから参加できる仕組みを導入している事業者もありました。
誰でも自由に参加できるオークションではないみたい
今回確認した事業者では、会員になるために動物取扱業の登録が必要で、会員証を持っていない人は会場に入ることができないと規約に定められていました。
すべてのペットオークションが同じ条件なのかは分かりませんが、今回確認した事業者の公開情報を見る限り、一般の人が犬を買うために参加するものではなく、動物を取り扱う事業者同士で売買するためのオークションであることが分かりました。
ペットオークションはどれくらいの規模なのか
ペットオークションが存在することは分かりましたが、次に気になったのが、実際にどれくらいの犬がそこで取引されているのかということでした。
現在の全国の年間取引頭数や年間取引総額を示す最新の公的統計は確認できませんでしたが、環境省が2023年に行った全国一斉調査から、その規模の一端を見ることができます。
全国19会場、約1週間で犬だけでも約3,800頭
環境省は2023年11月、全国のペットオークション事業者とブリーダーを対象とした一斉調査を実施しています。
その際、全国19のオークション会場から、直近おおむね1週間に競りにかけられた犬について、約3,800頭分の情報を収集しています。
これは年間の取引頭数ではなく、調査対象となった約1週間の数字です。
犬だけで約3,800頭という数字を見て、自分がそれまで存在すら知らなかった場所で、これだけの犬が流通していることに驚きました。
過去の取引データでは犬猫あわせて約120万頭
同じ環境省の調査では、10のペットオークション事業者から過去の取引情報についても提供を受け、犬と猫を合わせて約120万頭分のデータを収集しています。
これは一年間の取引頭数ではなく、複数年にわたる過去の取引データを集めたものなので、「年間120万頭がオークションで取引されている」という意味ではありません。
私はペットオークションというもの自体を知らなかったので、10会場から集められた過去の取引データだけで犬猫あわせて約120万頭という数字にとても驚きました。
目を背けたくなる現実も… ペットショップに並ぶ犬や猫はどこで生まれているのか
ペットショップに並ぶ犬や猫の流通経路をたどると、その出発点には犬や猫を繁殖する繁殖業者(ブリーダー)がいました。
では、そこで子犬や子猫を産む親犬・親猫は、どのような環境で暮らし、どのように繁殖が行われているのでしょうか。
ペットショップに並ぶ子犬や子猫を生み出す繁殖業者
ペットショップに並ぶ子犬や子猫は、繁殖業者(ブリーダー)のもとで生まれています。
繁殖業者は、犬や猫を繁殖し、生まれた子犬や子猫を販売する事業者です。
では、そこで暮らす親犬や親猫は、どのような環境で飼育されることになっているのでしょうか。
繁殖業者には犬や猫を飼育するための基準がある
犬や猫を繁殖して販売する事業者が、それぞれの判断だけで自由に飼育できるわけではありません。
環境省が定める飼養管理基準を確認すると、犬や猫が生活するケージなどの広さ、運動するためのスペース、清掃や衛生管理、温度や湿度、従業員一人あたりが飼育できる頭数などについて、守るべき基準が設けられていました。
決まりがあっても、守られていない犬や猫の繁殖場がある
犬や猫を繁殖する事業者には、飼育環境について守るべき決まりがあることを知りました。
一方で、齋藤さんのほかの動画や、動物保護に関わる方々の発信を見るようになって、私はその決まりが守られず、杜撰な環境で犬や猫が飼育されている繁殖現場が実際にあることも知りました。
動画を通して知った、問題のある繁殖現場
私が見た動画の中には、狭い場所で多くの犬や猫が飼育されていたり、清掃が十分に行われていなかったりと、本来守るべき飼育環境とは大きく異なる繁殖現場を伝えているものがありました。
ペットショップに並んでいる子犬や子猫を見ているだけでは、その子を産んだ親犬や親猫がどこで、どのような環境で暮らしているのかまではなかなか見えてきません。
私自身もこうした動画を見るようになるまで、問題のある繁殖現場が実際に存在することを知りませんでした。
YouTubeチャンネル 齋藤鷹一【犬猫の人】
【調査】ペットショップの裏側を暴く!
ショップのプロフィールに載ってる繁殖業者の実態がこちら
この動画は、私がペットショップの店頭からは見えない背景を初めて知るきっかけになった動画です。
映された繁殖場では、狭いケージの中で多くの犬が飼育されている様子など、ペットショップに並ぶ犬を見ているだけでは分からない現実が映されていました。
【衝撃】ドッグショーの栄光の裏で…放置された犬舎に広がっていた現実
齋藤さんの動画の中でも、私が特に衝撃を受けたものがあります。
動画で訪れているのは、ドッグショーなどで数々の実績を残し、「日本ナンバーワン」とも称されていた元トップブリーダーの犬舎です。
かつて100頭以上の犬が飼育されていたというその場所には大量のゴミが残され、敷地内からは犬の骨も見つかっています。
トップブリーダーと聞けば、犬を大切に育て、飼育環境もしっかり整えられている姿を想像する人は多いのではないでしょうか。
少なくとも私は、これほどの環境で犬が飼育されていた可能性など想像もしませんでした。
ペットショップに行けば、「血統書付き」と書かれた子犬や子猫が並んでいます。
でも、その言葉や肩書き、受賞歴だけを見ても、その子がどこで生まれ、親犬や親猫がどのような環境で暮らしているのかまでは分かりません。
この動画を見て、犬や猫を迎えるのであれば、表に見えている情報だけで判断するのではなく、可能であれば実際に自分の目で繁殖環境まで確かめることが大切なのだと強く感じました。
そして、すべての繁殖現場がこのような環境ではないからこそ、こうした現実も実際にあることを知ったうえで、買う側、飼う側もちゃんと考え一つの命を迎えなければならないと強く思いました。
終生飼養の確保? 売れ残った犬や猫と繁殖を終えた親たちの行方
ペットショップに並んでいたものの売れなかった犬や猫や、繁殖場で子犬や子猫を産んできた親犬・親猫は、その後どうなるのでしょうか。
調べていくと、販売することが難しくなった犬や猫について、犬猫等販売業者には「終生飼養の確保」というものが求められていることを知りました。
販売事業者に求められる終生飼養の確保
終生飼養の確保という言葉だけを見たとき、私は、売れなくなった犬や猫についても、販売事業者がその後の一生まで責任を持つための決まりなのだと思いました。
ところが調べてみると、「終生飼養の確保」は、販売事業者自身がその犬や猫を最期まで飼養することだけを意味するものではありませんでした。
新しい飼い主へ譲渡することもその方法に含まれており、販売が難しくなった犬や猫や、繁殖を終えた親犬・親猫については、愛護団体などと連携して新たな譲渡先を確保することも想定されていました。
しかし、この終生飼養の確保についてさらに調べていく中で、私はどうしても腑に落ちないことが出てきました。
終生飼養の確保に感じた疑問については、今回の記事とは分けて、別の記事で詳しくまとめる予定です。
公開した際には、そちらも読んでいただけたらと思います。
結局、売れ残った犬や猫や繁殖を終えた親たちはどうなるのか
では、売れ残った犬や猫や、繁殖を終えた親犬・親猫は、最終的にどこへ行くのでしょうか。
環境省の資料を調べてみると、動物取扱業者を対象に、販売されずに売れ残った犬や猫をその後どのように扱ったのかを尋ねたアンケート調査がありました。
売れ残った犬や猫の行き先は一つではなかった
調査結果について環境省は、売れ残った犬や猫は、生産業者(ブリーダー)や別の動物業者へ譲渡・販売されたり、自社で繁殖用として引き続き飼育されたりすることなどが多いとまとめています。
そのほかにも、一般の人への無償譲渡や、動物愛護団体などへの引き取り依頼といった回答があり、売れ残った犬や猫がその後たどる道は一つではないことが分かりました。
さらに、この調査について話し合われた環境省の審議会議事録を確認すると、売れ残った雌犬については繁殖用としてブリーダーから需要があり、ペットショップ自身がブリーダーを兼ねている場合には、そのまま繁殖用として残すこともあるという説明がされています。
つまり、ペットショップで売れなかった犬や猫が、新しい飼い主へ譲渡されるだけではなく、再び販売や繁殖に関わる事業者へ渡ったり、今度は自らが繁殖する側になったりするケースも、環境省の調査や審議会の記録から確認できました。
愛護団体などへ引き取られる犬や猫もいる
環境省の調査では、売れ残った犬や猫の行き先として、動物愛護団体などへの引き取り依頼も挙げられていました。
結び-LINKでは以前、駅前で猫を連れて募金活動を行う団体についての不信感についての記事の中で、ペットショップや繁殖業者から犬や猫を引き取る愛護団体についても取り上げています。
そして今回、「終生飼養の確保」についてさらに調べていく中で、販売事業者と愛護団体との関係について、以前の記事を書いたときとはまた別の疑問が出てきました。
この話までここで掘り下げると本題から大きく広がるため、「終生飼養の確保」と愛護団体との関係については、別の記事で近日公開する予定です。
特定非営利活動法人SPA 代表理事の齋藤鷹一さんについて
今回、生体販売について考えるきっかけになった動画を発信している齋藤鷹一さんは、特定非営利活動法人SPAの代表理事として、犬や猫の保護・譲渡活動などに取り組んでいる方です。
SPAは2019年に設立され、東京都を拠点に活動しています。
齋藤さん自身も保護犬・保護猫の現場で活動しながら、YouTubeやSNSを通じて、動物保護の現場やペットを取り巻くさまざまな問題について発信を続けています。
この記事で紹介した動画以外にも多くの動画が公開されていますので、興味を持った方は、ぜひ齋藤さん自身の発信もご覧ください。
特定非営利活動法人SPAの代表理事 齋藤鷹一さん概要
| 団体名 | 特定非営利活動法人SPA Society for the Protection of Animals |
| 代表理事 SPA総責任者 | 齋藤 鷹一(さいとう よういち) |
| Webサイト | https://s-p-a.jp/ |
| SNS | Instagram YouTube TikTok |
知ったことで考えた 動物を買う人や飼っている人だけではなく、社会全体の意識が変わること
結び-LINKを立ち上げてから、見て見ぬふりができなかった人たちが、自分のお金や時間、生活を投じながら犬や猫の保護活動を続けている現実を紹介してきました。
今まさに助けを必要としている犬や猫がいる以上、そうした活動は必要だと考えています。
しかし、メディアやSNSでは多くの人が動物保護の問題を発信し、実際に保護活動を続けているにもかかわらず、なぜ今も不幸な命が生まれ続けているのだろうと、矛盾を感じることがありました。
結び-LINKは、そもそも猫や犬の保護活動そのものを必要としない社会の方が正しいと考えています。
救わなければならない犬や猫が生まれ続けるのであれば、どれだけ保護活動を頑張っても、問題の根本はなくなりません。
そんな疑問を抱く中で、生体販売について知り、今回のように自分でも調べて考えるようになりました。
法律や制度を変えることができれば、でも現実は難しい
はっきり言ってしまえば、生体販売を禁止し、動物を遺棄したり虐待したりした人への罰則をもっと重くすることで、今起きている問題の多くを減らせるのではないかと考えています。
ただ、それを今の日本で実現するのは、相当に難しいとも感じています。
資本主義社会の中でペット市場は大きな産業となっており、生体販売を根本から変えるような法律や制度を実現するには、大きな政治的な力と、それを後押しするとても大きな民意が必要になると思うからです。
では、法律や制度が変わるまで、何もできないのでしょうか。
買う側・飼う側の意識が変われば、不幸な命を減らせるのではないか
今回、生体販売の背景について調べる中で、法律や制度を変えることは難しくても、買う側・飼う側の意識や行動が変わることで、不幸な命を減らしていけるのではないかと考えるようになりました。
例えば、犬や猫を迎えるとき、見た目のかわいらしさや価格だけで決めるのではなく、どこで生まれ、どのような環境で育てられてきたのかを確認する。
劣悪な環境で繁殖させているところや、売れ残った犬や猫の行方が不透明な事業者からは購入しないという選択をする。
そうした人が増えれば、犬や猫を杜撰に扱う事業者は、今までと同じように商売を続けることが難しくなるはずです。
法律で禁止されていなくても、買う人がいなくなれば商売は成り立たなくなるのですから。
ただ、ここで考えたのは、どうすれば買う側・飼う側の意識を変えていけるのかということです。
犬や猫を迎える本人が生体販売の問題を知ることはもちろんですが、周囲の人たちも同じように現実を知っていたら、どうでしょうか。
例えば、知人が犬や猫を迎えたとき、「どこで迎えたの?」「どんな環境で育った子なの?」と関心を持つ人が増えれば。
どこから迎えるのか、
その選択に対するモラルを問われるようになると思います。
そして、それは購入するときだけの話ではなく、動物を迎えた後の飼い方や飼い主としての責任、遺棄や虐待といった行為に対しても、社会全体の関心が高まることで、安易な行動を思いとどまらせる抑止力になるのではないでしょうか。
だから結び-LINKは、買う人や飼っている人だけでなく、動物を飼っていない人も含めて、社会全体でこの問題を知り、考える人が増えることが重要だと思っています。
以前の私のように、何も知らなかった人にこそ届けたい
動物保護や生体販売の問題について、すでに関心を持っている人たちは、自分から情報を調べたり、関連する発信に触れたりする機会があります。
しかし、以前の私のように、そもそも興味も関心もなかった人は、問題があることさえ知らず、調べるという行動にすらたどり着きません。
知らなければ疑問を持つことも、考えることもできないのです。
だからこそ、結び-LINKが一番届けたいのは、以前の私のように、こうした現実を知らなかった人たちです。
今回、私が齋藤さんの動画をきっかけに生体販売について考え、調べるようになったように、これまで関心のなかった人が何かを知り、自分で考え始める。
そうした人が増えていくことで、社会全体の意識が変わり、買う側・飼う側の選択や行動にも影響が生まれるのではないかと思っています。
さらに、これまで問題を知らなかった人たちにまで関心が広がり、社会全体で考える人が増えていけば、法律や制度を根本から変えるほどの大きな民意につながる可能性もあると考えています。
今の結び-LINKには、まだ大きな影響力はありません。
それでも、以前の私のように何も知らなかった人が、現実を知り、疑問を持ち、自分で考えるきっかけを少しでもつくっていきたい。
知らなければ、考えることもできない。
考えるきっかけをもっと多くの人に作っていきたい。
結び-LINKは、そんな思いでこれからも発信活動を続けていきます。
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